抜歯にしない根っこの治療

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2010年 VOL.85

一般的に根っこの治療、根管治療を歯内療法といいます。
私は、15年前の1995年に日本歯内療法学会専門医になりました。
そして根っこの治療に専門性を持って、深く関わって来た結果わかったことがあります。

■根っこの治療とは?
根っこの中の歯髄(しずい)神経や軟組織が炎症を起こしたり、感染したりすると歯内療法が必要になります。
そのまま放置すると、痛んだり腫れたりします。


▲クリックで拡大表示します

そこで、とても小さな器具を使い、根管から神経や汚物をきれいに取り除き、消毒し、根管充填(じゅうてん)をします。
簡単に書きましたが、歯内療法は、実に高度な技術の必要な難しい治療なのです。


■抜歯となってしまった場合
米国での研究例をご紹介します。
X線写真では、根っこの治療が上手に終了しているように見えるにもかかわらず、根っこの先に大きな膿の袋ができてしまった失敗症例です。
やむなく抜歯となり、その歯を調べてみました。すると、驚くべき実態がわかったのです!
根っこの先を輪切りにして、根管の断面を顕微鏡で見たところ、根管の中は神経の取り残しや汚物が壁面にべっとり残ったままなのでした。
研究によると、全体82%の根管がこんな悲惨な状況でした。
これでは治るはずがありません。


▲クリックで拡大表示します


■本当に望ましい根管治療とは?
私は、そうした従来の根っこの治療方法の問題点に気づき、根管から神経や汚物を徹底的にきれいに取り除くやり方を米国の歯内療法専門の教授から学び、実践してきました。
下記の写真がその方法で行った治療です。(抜去歯を使用)


▲クリックで拡大表示します

特殊な形のニッケルチタン製の根管治療器具を使用しました。どうでしょうか?
前の抜歯になった写真と比べて、根っこの中が輝く様に綺麗になっているのがわかります。


■精密・良好な治療に顕微鏡
歯を救い守る根っこの治療を精密に行うために、もうひとつ心強い最新のテクノロジーが顕微鏡(マイクロスコープ)です。
顕微鏡の使用により、根っこの治療成果が飛躍的に良好となりました。
さらに、従来では抜歯になってしまうような歯も救うことができるようになったのです。


▲クリックで拡大表示します


最後に…
根っこの治療は、複雑で難しいものです。さまざまな要因により、症状が発生します。
もし、根っことその周辺に異常を感じたなら、まずはかかりつけの歯科医師にご相談することをおすすめします。



根管治療についてもっと詳しく知りたい方へ
「大切な歯を失わないために、ぜひ知ってほしいことがあります。」
ご自分の歯を長くもたせて、十分な機能と美しさを保ちたいというのは、万人の願いです。
歯を失う大きな原因は、根っこの中(歯内)が細菌感染により悪化し、その結果、抜歯になってしまうこと。
痛みや腫れは抜歯によって一時的に解決しますが、失った歯は取り戻せません。
そんなとき、より良い根っこの治療をすることで、歯を抜かずに救い、守ることができます。根っこの治療の全貌を解説しましたので、皆様のご健康のために参考にしてください。
ペインフリー根管治療 by N.Sato

歯をなくした人に福音のインプラント治療

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2010年 VOL.81

■インプラントのキーポイント
インプラント治療を始めてから16年になります。年間で1,200本ほどの術後メンテナンスをしていますから、インプラントの成績については、知り尽くしています。
歯科治療の中でも、インプラント治療はトラブルや訴訟が最も多いと言われています。
最近は、インプラントがブームのようになってしまい、被害にあわれた方も少なからずいるようです。患者さんにしてみると、不安に思われることがあるでしょう。しかし、この問題は、ほとんどが歯科医師側の診療に取り組む姿勢と力量の問題にすぎないと考えられます。
診断力と手術や上部製作の技術力と、なによりインプラント治療の経験が豊富であることが、よりよいインプラント治療にとって重要です。さらに、歯科医院の診療設備(CT撮影、手術環境、滅菌消毒など)と診療に携わる優秀なスタッフによるチームアプローチの実践も不可欠です。もちろん、十分な時間をかけて、皆さまが納得するまで治療説明を行うことは、治療に先がけて、最優先すべきことであります。

■「入れ歯の悩み」とさようなら
歯をなくした方や入れ歯の悩みを持つ方にとって、インプラントは、とても適した治療方法です。力強くかめるようになり、入れ歯とは比較にならないかみ心地を得ることができます。残っている歯も、長持ちするようになります。違和感もほとんどなく、取り外しの不便さもなく快適になります。その結果、よくかめる、気持ちが前向きになる、自信がつく、といった精神的な効果も絶大です。

■それでも、自分の歯を大切に
インプラントは、骨の中に埋める金属の人工歯根であり、自分の天然の歯根として生え替わるわけではありません。残っている歯根を生かすことができるなら、しっかりと「根っこの治療」をして、その歯を活用した治療をすべきです。
自分の「天然の歯根」と歯のない部分の「人工歯根(インプラント)」をバランスよく整えて、お口の全体のかみ合わせ治療をすることが、将来を見据えた安心できる治療方法です。

これがよく治るインプラント治療です

▲クリックで拡大表示します

抜かずに治す歯科治療〜「顕微鏡治療」革命

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2009年 VOL.78

最近、週刊誌にて「顕微鏡歯科治療」についての特集記事が掲載されました。

その要点はこちら↓


■歯を救う治療と抜歯
歯を救い守る根管治療(根っこの治療)は、歯を残す最後のとりでであり、顕微鏡が最も威力を発揮する分野です。しかし、その根管治療を一生懸命に学ぶ学会は、30年経っても全国で1,500人程度です。
それに対し、インプラント学会の会員は、1年間で1,500人も増加し、会員数は1万人を超えました。歯科医師は、どうやら歯を助ける治療より、インプラント治療をする勉強の方へと大きく偏っているようです。しかも、最先端の治療と称して、しっかりと治療すれば抜かずにすむ歯までも抜いて、インプラントにするようなやり方がもてはやされているのです。
これでは、昔の歯科トラブル多発時代に逆戻りしてしまうのではないかという懸念があります。

■歯を抜かない大切さ
インプラントには、手術に伴い、例えば、骨内の血管損傷による出血、神経の損傷による神経まひなどのリスクがあります。それらについて、十分な危険回避が行われているのかどうか、疑問に感じられる場合も見られます。実際に、施術したところ下口唇まひとなり、当クリニックを受診され、その窮状を訴える方もいらっしゃいます。
ですから、まずはいま残っている、ご自身の歯を大切にしてほしいのです。
歯を抜かずに治し、長持ちさせるということの重要性を、患者さんにもっともっと気づいていただきたいと思います。

■革命的! 顕微鏡歯科
歯を救い守るための、虫歯や根管の精密治療時に心強いのが、最新テクノロジーの顕微鏡(マイクロスコープ)です。
顕微鏡歯科によって、革命的に、より精密なよい治療ができるようになり、従来では抜歯になってしまうような歯も救うことができるようになりました。
大切な歯は、失うと二度とは戻らないのです。抜いてインプラントでいい、というような短絡的な発想に流されては、あとで後悔することになりかねません。顕微鏡歯科の存在は、抜歯を告知されて悩んでる方にとっても朗報となることでしょう。



▲クリックで拡大表示します


写真左:診療室に設置された高性能の顕微鏡(マイクロスコープ)。
    約3倍から20倍まで拡大できる。
写真右:顕微鏡歯科治療は、より精密な治療が可能となったが、
    術者の難度も高く熟練が必要である。


あなたは治る!〜抜かずに治す歯科治療〜

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2009年 VOL.75

歯が1本、また1本と失われていく恐怖。そんな思いをしていませんか? その場しのぎの治療を繰り返していると、間違いなく歯が失われます。しかし、抜歯といわれても簡単にあきらめないで、抜く前に助かる道を探す努力をすることをおすすめします。

■こうすれば治る歯槽膿漏(歯周病)
歯槽膿漏のことを歯周病といいます。歯がグラグラ動揺して、歯周病と診断され、抜歯といわれても、簡単にあきらめてはいけません。抜いてしまったら二度と歯は生えてこないのですから。
歯周病の治療では、世界をリードするスェーデン・スカンジナビア方式があります。
一人一人の病状、さらに一歯ごとに適格な診断と治療を行い、生涯に渡り継続した歯周病管理(メンテナンス)をしていく方針です。

【スウェーデン・スカンジナビア方式歯周治療】
●一人一人のお口の状態、さらに一歯ごとに診断し、治療を行う。
●生物学に基づき、生体をいたわりながらすすめる。
●重度の歯周病には、必要に応じて歯周外科治療もおこなう。
●ライフスタイルや生活習慣も重視する。
●継続したメンテナンスで、生涯にわたりサポートする。

■根っこの治療で歯を救う
根っこの治療は、とても難しい治療であるにもかかわらず、日本の医療制度の事情で、どうしても不完全になりやすい傾向にあります。そのため、根っこの先に膿ができ、抜歯を告知されることがあります。しかし、あきらめないで。前回でもご紹介したように、通常のケースでは治らないケースでも、治せる方法があります。

■脚光を浴びる顕微鏡(マイクロスコープ)治療
医科領域では、顕微鏡治療はすでに、耳鼻咽喉科、眼科、脳神経外科、整形外科などで導入されております。人体を救う手術において、精密治療をおこなうために不可欠なものとなってきました。1990年代後半から、歯科治療にも応用されるようになったのです。

■歯科治療に、なぜ顕微鏡なの?
私たちの歯科治療は、実際に目では見えないところを、勘と経験により「手探り」で治療をしているというのが現状です。ところが顕微鏡を使用することで、いままで見えなかったところを、3倍から20倍へと大きく拡大し、すぐれた立体画像を、確実に目で見て治療することができるようになったのです。いままで見逃していたものがどんどん見えるようになり、精密な治療ができることになりました。その結果、重度の歯周病に対する外科的な歯周再生治療でも、大きな効果がみられるようになりました。また、根っこの治療では、顕微鏡を使うことで、難症例でも飛躍的に抜かずに治る成功率が高くなったのです。

終わりに…
本当に抜かなければいけないのでしょうか?
私たちは、最先端の機器の導入と、抜群の治療技術の習得によって、従来では、抜歯となってしまうようなケースでも抜歯をせずに、歯を助けるように努めているのです。


▲クリックで拡大表示します

75_02.jpg
写真左:顕微鏡を使った外科手術。 写真右:歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)


本当に抜かなければいけないのでしょうか?

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2008年 VOL.74

最近の歯科治療では、残せる歯も即座に抜いてしまって、インプラントにしたほうがいいですよ、という傾向があるようです。本当にそれでいいのでしょうか?私は、特に根っこの治療(根管治療)の専門科として「歯を残す・歯を救う」という立場をとっていますので、抜かなくて済む歯まで抜いてしまうのは、とてもおかしなことだと思っています。
本来は、歯周治療や根管治療をしっかりとやるべきなのです。

■欠損部に人工歯根(インプラント)
私たちは、患者さんの歯の欠損した部分に合わない義歯が入っていたり、まったくかめなかったりする苦しみや見栄えの悪さ、入れ歯を入れるとバネのかかった歯が早期に喪失してしまう、というような現実に対して、何とかしてあげられないかと考えた末、インプラント治療を始めました。 そして、残せる歯は全身全霊をこめて治療してきました。
しかしいまや、昨今の医療費削減政策の問題なのか、急激にインプラント療法が歯科界にはやりだし、さらに、ここぞとばかりにインプラント販売企業が強力な売り込みを図っています。
その結果、現在はインプラント優先主義となっているのです。

■歴史は繰り返す
歯科医師の務めとしては、適切な治療をすれば抜かずに済む歯ならば、基本的に、全力を尽くして残すべきではないでしょうか? 一方で、歯にタテにひびが入ったり割れたりしている場合は、確実に抜歯ですが、私が言いたいのは、そうした抜歯したケースではない歯まで抜かれることがあるということです。
実は、この風潮は昔もあったことの繰り返しなのです。歴史的に昭和50年代から、抜いてブリッジや義歯へという傾向が顕著になり、問題となりましたが、それが、現代はインプラントに置きかわったといえるでしょう。

gazou01.jpg

[ 本当に抜歯が必要なケース ]

  • 歯の根っこが3分の1以下しか残らない場合
  • 歯の根っこにひびが入っていたり、割れている場合
  • 重症の歯周病の場合
  • 親知らずの歯が痛む場合 など

■進歩した根っこの治療
私は、インプラント実践家ですが、抜かなくてもよい歯まで抜くことには、賛成いたしかねます。根っこの治療については、治療用実体顕微鏡(マイクロスコープ)を使用することで、いままで治すことの難しかった歯も治療できるようになってきているのです。
抜歯を告知されてお悩みの方にとっては、朗報となるかもしれません。

gazou02.jpg

写真左:顕微鏡(マイクロスコープ)を使用した根っこの治療
写真右:明視拡大により、勘と経験の手探り治療から、確実に根っこの治療ができるようになりました。さらに、顕微鏡を使うことで、外科的根っこの治療(マイクロサージェリー)で、治癒する割合が格段に向上しました。

根管治療について
3D/X線CT撮影装置について

進化するインプラント治療

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2007年 VOL.66

アゴの骨に人工歯根を埋め込むインプラント治療は、ここ数年で広く普及してきました。歯を失うことで、良く噛めない、話がしにくい、入れ歯が外れやすい、気持ちが消極的になるなど生活レベルでの障害も生じることになります。そこで、インプラント治療をすることで、より快適な人生の時間(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)を毎日味わっていただくことができます。たとえば、食べ物をおいしく食べることができる、発音の不自由なく会話ができる、カラオケが楽しく歌える、といった人生を実感できることでしょう。

■即時インプラントとは
歯科学の進歩は日進月歩。ここ数年でインプラント治療にも新しいトレンドが流れてきています。それは、患者さんの立場に立って考え出された抜歯と同時に行う即時インプラント治療です。

従来は、歯を失った場所があれば、そこにインプラントを埋めるようにするのですが、即時インプラントとは、何らかの理由で、歯が抜歯になってしまった時に、抜歯と同時にインプラントを埋めるやり方です。(歯肉や骨の感染状態によっては、即時インプラントができない場合もあります)。たとえば、歯槽膿漏で歯がぐらぐらになった、虫歯が高度に進行して、もう残根となった、歯にかかる咬合負担が強大で歯根が破折してしまった、根の先に大きな膿ができたといった場合が考えられます。そうした場合、いままではいったん歯を抜いて、その部位の完全な治癒を待ってから、インプラントを埋入することになっていました。つまり、はじめにまず抜歯、その後、数ヶ月後にインプラントを埋め込むことになります。それに対し、即時インプラントでは、一回の治療で抜歯と同時にインプラントを埋め込むことができるのです。そうすることで来院回数も治療期間も少なくできるのです。

■ハイドロキシアパタイト(HA)の活用
しかし、残念ながらこの即時インプラントは、どのインプラントでも上手くいくわけではありません。即時インプラントの良好な治療を導くためには、チタン製のインプラントの表面に、歯や骨と同様の成分であるハイドロキシアパタイト(HA)を高純度でコーティングしたHAインプラントの使用実績が最良となっています(ZIMMERカルシテックインプラント)。このHAインプラントは、生体とのなじみが良く、骨と科学的結合(バイオインテグレーション)により一体化するという特徴があります。また、日本人のケースに適したインプラントの直径と長さがそろっていることも重要なポイントです。

■治療期間と回数の短縮
インプラント治療では、治療期間が長くかかることがひとつの問題点でした。しかし、HAインプラントを使用して即時インプラントを行うことで、ある一定の条件さえ整っていれば、インプラントを埋入した手術のその日に、すぐ仮の歯を入れて、軽い食事ならできるようになるのです。すなわち、1日で残っていた歯を抜いて、インプラントを入れて見た目も良くなおすことができるのです。さらに、HAインプラントの場合、骨結合までの期間が、順調な経過であれば8週間で可能となり、治療期間の著しい短縮が達成されることになります。

■腫れや痛みが少ない
外科処置を行うと腫れや痛みがでることが少なくありません。私達は、できるだけ腫れにくいように、独自の工夫で手術を小さな範囲にとどめて行うようにし、患者さんの負担を少なくするように心がけています。その中でも、この即時インプラントは究極とも言えるでしょう。なぜならば、抜歯をすることで、インプラントを埋め込む部分の粘膜の切開や剥離がいらないからです。実際に行ってみると、あまり痛みも腫れもなく、良好な治癒となっています。

即時インプラントは、現在の最先端治療です。また、インプラント治療は保険適用がなく、治療費は決して安いものではありません。そして、できるだけ安全な治療を受けるために、治療技術や、診療設備と診療環境の万全な歯科医院を見つけることも重要です。そうすることで、この即時インプラントの利便性を享受することができるでしょう。

i66s.jpg

入れ歯の良しあし

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2006年 VOL.59

■8020運動と現実
みなさんは、8020運動をご存知ですか?簡単にいうと、80歳になったときに、自分の歯が20本残っているようにしようという運動のことです。平成17年の歯科疾患実態調査によると、80歳で20本以上自分の歯を保有する人の割合は、20%を超えていることがわかりました。しかし、現実に80歳で残っている歯の平均本数は約9本、19本の歯が失われているのです。20歳台をピークに、28本あった歯は徐々に少なくなり、50歳で3本、60歳で7本、70歳で13本失われているようです。これでは、まだまだ入れ歯のお世話になる人達がたくさんいることがわかります。しかも、そのうち半数以上の人達が、合わない入れ歯に悩んでいると聞きますから、大問題なのです。

■そもそも入れ歯ってなに?
普通、入れ歯と呼ばれている装置は、取り外しのできる歯ぐきのような床(しょう)のついたもののことです。大学には、その入れ歯の研究と教育のためだけにひとつの専門学講座や教室があり、それだけ、専門性が必要で、難しい分野といえるのです。入れ歯には、部分床義歯と全部床義歯があります。部分入れ歯の構造は、歯のなくなった粘膜部分をおおうピンク色の床とその上に人工歯、そして、残っている歯をつかむ金属のクラスプが基本的なパーツです。さらに、歯のない本数が多いと、床を大きく広げたり、バーという連結装置で反対側の歯につなげたりする必要があります。いずれにしても、初めて入れ歯を入れたときは、慣れるまで時間がかかります。しかも、作ったらすぐに、痛みもなく、噛み合わせも良く使えるわけではなく、何度か歯科医院での調整が必要です。

■なぜ、合わない入れ歯に悩む方が多いのか
私達も、毎日の歯科診察の中で、多くの方が合わない入れ歯に悩んでいる状況を目にしています。そして、歯科医師も、そうした患者さんの訴えにこたえるべく努力しているのが実際なのですが、残念ながら、すべての方の入れ歯の悩みを解決できるわけではありません。なぜならば、現在の保険制度の枠の中では、さまざまな制約があり、手間をかけてやらなければいけない部分を省略したり、入れ歯を支える仕組みが不十分なやり方でしかできなかったりするので、やむを得ないところもあるのです。また、部分入れ歯の金属クラスプは、残っている歯に大きな負担となります。クラスプをかけた歯が次々と動揺し、抜歯になってしまう経験をした方も少なくありません。その結果、作り直しとなった入れ歯は、一回り大きくなり、さらに残っている歯の負担が過剰になるのです。これでは、お先の人生、真っ暗です。

■残っている歯の負担が少ない入れ歯
どうしても、そうしたクラスプタイプの入れ歯がうまくいかない方には、
次の2種類の取り外し式の入れ歯をご紹介いたします(図1)。どちらも、クラスプが不要で外観に金属が見えないため、美観が良くなります。入れ歯の中では、群を抜いて物が噛めて、使用感が良く、残っている歯を長持ちさせることができるのです。私の経験でも、秋田市に来て、初めてつくったコーヌスタイプの入れ歯は、17年以上経っても、いまだに快適に使われており、10年以上使っているケースはめずらしくありません。

■予想以上にすばらしい第三の歯
それでも取り外し式の入れ歯である以上、長期的に見ると、残っている歯に負担をかけ、動揺をさせ、失われる危険性をはらんでいます。そこでもう一つの選択肢としておすすめできるのが、インプラントです(図2)。インプラントとは、あごの骨に埋め込む人工歯根のことです。インプラントを入れて固定式のかぶせ物(クラウンやブリッジ)をすることで、残っている歯の負担が少なくなるばかりではなく、まわりの歯周組織が強固になり、より長く残すことができるようになります。もちろん全部の歯がなくなった場合でもできます。ただ、このインプラント治療は、相当な熟練が必要な治療方法ですし、患者さんとの十分なインフォームドコンセント(説明と同意)も必要となります。

■人生を楽しむために
一般的に入れ歯と聞くだけで、嫌なイメージを持ち、時には絶望的な悲観を抱く方もいるでしょう。確かに、入れ歯の悩みを聞いてみると、適合が悪く、痛い、噛めない、そして外れやすい。よくこんな入れ歯を入れていたなあと思うことが少なくありません。しかし、今回ご紹介したような方法で治療した結果、絶望のふちから復活し、心から人生を楽しむことができるようになった方がたくさんいるのです。

症例別インプラント治療法

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2005年 VOL.52

おいしいものを、おいしく食べて、話し手笑って豊かに過ごすには「歯」の健康が大切です。歯を失った悩みに対する治療法として効果的なのが「インプラント」です。

当誌ではこれまで、インプラントの仕組みやメリット、体験談などを通してインプラント治療について詳しく解説してきました。しかし、治療の仕方は、歯の欠損部分によって、また人によっても違います。今回は、港町歯科クリニックの佐藤暢也先生から、歯を失った様々な状況に応じたインプラント治療についてうかがいました。

■インプラントとは
インプラントとは、顎の骨の中に人工の歯根を埋め込み、上部にかぶせ物や入れ歯(補綴物)を取り付ける治療方法です。インプラントを埋め込む場所によって、また、健康状態によって治療ができるかどうかを検討し、メリットとデメリット、アフターケアなどについて、十分納得していただいてから治療が始まります。

■治療の基本
歯1本の喪失部に1本のインプラントを埋め込むのが基本です。3本以上の歯を喪失した場は、必ずしも喪失歯数分のインプラントが必要とは限らず、上部にかぶせ物や入れ歯を作った時の噛み合わせの力を適正に受けとめることができるか、炎症や口腔内の変化に対応できるか、に配慮した本数が必要です。

■治療の期間
インプラント埋入後、骨と結合するまでに上顎で6ヶ月、下顎で3ヶ月の安静期間をとります。その後、2回目の手術で歯ぐきの上にインプラントから上部の土台を立て、歯ぐきの治癒を待って型どりし、補綴物を製作します。ただし期間を短くして仕上げる技術革新もなされていますので、各歯科医院にご相談してください。

▼症例と治療方法(クリックで拡大)
i52s.jpg

インプラントに出会えた喜びが、人生を変えた〜S.Uさんの体験談〜

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2004年 VOL.46

だれもが願うのは、おいしいものを、おいしく食べて、心から満足する食生活。そして、だれとでも気兼ねなく、笑顔で話すことのできる生活です。でも「歯」に自信がなければどうでしょう?あなたの日常生活は、精神的につらく内向的なものになってしまいます。歯の健康は、あなたの生活の基本にあるのです。

「歯」の悩みは、親しい人や家族にさえ相談しづらく、その精神的苦痛は計り知れないものがあります。「歯が悪いけれど、入れ歯にはしたくない」「食べ物がおいしく食べられない」「入れ歯の具合が悪くて、話をするにも口元が気になる」など、ひそかに悩んでいるかたが意外と多いのが現実です。そんな悩みに効果的な治療法として注目を集めているのが「インプラント」。あごの骨の中に人工歯根(インプラント)を埋め込んで、その人本来の噛み合わせを取り戻す治療法です。残っている歯を長持ちさせ、丈夫にする“足し算”の治療法であるインプラントは、噛める幸せ、話す楽しみ、おいしいと喜ぶ笑顔をつくるひとつの手段です。今回は、本来の噛み合わせと笑顔を取り戻したある方の場合を見てみましょう。

入れ歯にしたくなかったから15本をインプラントで治療しました
(S・Uさん 54歳・女性)
「インプラント」という治療法を知ったのは、一昨年の夏、「Kyo郷」の記事を読んだことがきっかけでした。上顎の差し歯の具合が悪くて、外れては治し、また外れては近所の歯医者で治してもらうのが4〜5年程続いていました。食べ物もおいしいとは思えない状態に、「入れ歯にしなければいけないのかな、それは嫌だな」と悩んでいたころに港町歯科クリニックと出会ったのです。

思い切ってカウンセリングを受け、インプラントの治療法についてうかがいました。人工歯根を埋め込むために骨に穴を開けるのが気になりました。特に私の場合は、検査をしてみると、上あごに10本、下あごに5本ものインプラントが必要な状態でしたので、手術や治療期間のことを考えると不安がありました。

インプラントという治療法は、手術をすれば噛み合わせがすぐにできるというものではありません。まずどうしようもなく悪くなってしまった歯を抜いて、傷口が治ってからインプラント手術を行います。インプラントを埋入してからは、上あごで通常6ヶ月、下あごで3ヶ月のあいだ、インプラントと骨が結合するのを待たなければなりません。その後に2回目の手術をして歯ぐきに土台を立て、さらに歯ぐきの治癒を待ってから型どりをして補綴物をかぶせます。

私の場合、どうしようもないほど悪くなってしまった歯とは言え、「まだある歯」を抜くことから始めなければならなかったため、それはとてもつらいものでした。それに、抜歯の後や1回目の手術の後などは、仮歯を入れて過ごさなければなりませんし、一時仮歯を入れることさえできない時期もあるのです。カウンセリングで「精神的にもつらい時期が8ヶ月程あります。この8ヶ月は大変ですが、インプラントをしないでいた場合の何十年のつらさを考えれば、たかが8ヶ月です。がんばりましょうね」との言葉に、私も覚悟を決めることができました。

治療については、全面的に佐藤院長を信頼していました。手術中の痛みはほとんどなく、手術後に多少はれはしましたが、友人にも気づかれることなく治療が進みました。でも治療本数が多かったものですから、治療を始めてからの一年と半年は、精神的に「山あり谷あり」の日々でした。今になって、ようやく「短かったのかもしれないな」と思えるようになりました。一年半の月日は、私にとってひとつの歴史なのです。

最近は、スーパーに行くのが楽しくなりました。おいしいものを自分で作って、おいしく食べられるようになったのです。以前はラーメンさえ食べられない状態で、外食をしても楽しくありませんでした。今は元の歯のようにしっかりと噛みしめられるようになりました。歯並びもきれいにしていただいて、口元を気にしないで話をすることができるようになりました。まるで最初から自分の歯だったように感じているほどです。歯間ブラシを使っての丁寧な歯磨きにも慣れてきて、歯を大切にしています。インプラントという治療法に出会えて良かったと心から感謝しています。

▼S・Uさんの治療の経過(クリックで拡大)
i46s.jpg

インプラント治療Q&A

■秋田さきがけコミュニティーマガジン「Kyo郷」掲載/2003年 VOL.40

Q1 インプラントって何ですか?
A インプラントとは、顎(あご)の骨の中に人工の歯根を埋め込み、上部にかぶせ物や入れ歯(補綴物)を取り付ける治療方法です。
現在、安全でかつ、長期的な観点から見て良好に機能するタイプのインプラントは、骨結合が得られる歯根型のインプラントです。材質は、人の身体にアレルギーなどの生じない金属であるチタンが主流となっています。

Q2 希望すれば、誰でもインプラント治療が受けられるのでしょうか?
A インプラント治療ができるかどうかは、二つの面から検討を必要とします。ひとつは、全身的な健康状態です。特に身体に問題がなく、歯科医院で通常の抜歯程度の処置が可能である方は、年齢に関わらずインプラント治療を行うことができます。もうひとつは、インプラントを埋め込む場所の問題です。歯の欠損している部分に十分な骨のボリュームがない場合、インプラントができないことがあります。近年、骨再生術など歯科学の進歩でそうした状況でもインプラントの埋入ができるようになりつつあります。

Q3 患者の立場でインプラント治療を選択する際に検討すべきことは何ですか?
A 「インプラントをすることで何でもかめるようになる」「入れ歯に代わる第三の歯である」というメリットが強調される反面、「インプラントを入れたが具合が悪い」「思っていたものと違ううえに、高額の費用がかかった」などという苦情も聞かれます。インプラント治療に興味のある方は、インプラントにより得られる効果と負担について、十分に理解しておきましょう。(下図・クリックで拡大)
i40s.jpg

Q4 インプラント治療を受けて完全に終了するまでにはどのくらいの期間がかかるでしょうか?
A インプラントを希望したから、すぐに手術に入るというわけいはいきません。まず、治療前に、インプラント治療に関する十分な説明を聞いていただき、納得してもらうことが大切です。次に、口の中全体の状況を改善する処置を行います。
インプラントは、単に歯のないところに人工の歯を入れればいいという代物ではありません。口の機能の回復と長期的に良好な状態を保つために、口の中全体を総合的に治療する必要があるのです。そうした治療と並行して、インプラント手術を行います。インプラント埋入後は歯ぐきを完全に閉鎖し、上顎で6ヶ月、下顎で3ヶ月、インプラントが骨と結合する安静期間をとります。その後、2回目の手術で歯ぐきの上にインプラントから上部の土台を立てます。そして、歯ぐきの治癒を待って、型どりをし、補綴物を製作します。いくら早くても下顎で6ヶ月、上顎で9ヶ月はかかることになります。
通常は、最終的に安定した状態を作るまで1年から1年半の期間をみてもらうようにしています。なお、手術はよほど特殊な手術を併用する場合をのぞき、入院の必要はありません。

Q5 インプラントは一生もつのでしょうか?
A 残念ながらYESとは言い切れませんが、高い確率でそうなることが期待できる、とは言えます。その際、埋め込んだインプラントとその上部の補綴物と分けて考えてください。上部の補綴物は、通常、数年に一度は、何らかの調整や修理が必要となるでしょう。埋入したインプラントについては、その周囲の骨の状態が問題となります。治療終了後、周囲の骨が溶けていく歯槽膿漏のような状態が生じることがあります。これを予防するためには徹底したホームケアによるブラッシングと3〜6ヶ月ごとの定期的なメンテナンスを受けることが必要です。

Q6 インプラント治療はどの歯科医院でも受けられるのでしょうか?
A 残念ながらすべての歯科医院でインプラント治療を行っているわけではありません。その理由は、大学でインプラント治療についての教育がほとんど行われていないことにあります。また、インプラント治療は、他の治療に比べ、トラブルの起こりやすい治療であることも指摘されています。
つまり、「インプラント治療を行っている」ということと、「適正なインプラント治療を行える」こととは別であることを認識してください。インプラントを埋め込むだけならば、歯科医であれば、難しいことではないのです。したがって、患者さんがインプラント治療を受けようとする際には、その歯科医がインプラントに関わる専門教育を受けているか、インプラントの学会や勉強会に所属して継続的に研鑽を積んでいるかどうかをチェックした方がいいでしょう。また、設備の面では、手術器材が整っていることや手術環境が良好であること(手術室や個室など)も重要です。

Q7 インプラント治療には、どのくらい費用がかかるのでしょうか?
A インプラント治療には、健康保険が適用されないため、費用は患者さんの自己負担となります。インプラントの費用は、埋入するインプラントに関わる手術と材料費、それに上部構造(土台と補綴物)の2つの合計からなります。
インプラントについて書かれた本やインターネット上から料金を調べてみると1本あたり25〜70万円と驚くほどの幅があります。ある大学病院での実施例でも、1本あたり30万円以上はかかるようです。しかし、すべてのケースで、歯のない本数分のインプラントが必要なわけではなく、例えば、6歯分の欠損部に4本で補綴することもありえます。費用の支払いは、通常インプラント埋入手術時とその後の補綴時の2回に分けての支払いとなります。

■佐藤理事長からのアドバイス
実際には、ここでお答えした内容以外にも、まだまだたくさん説明することがあります。
納得のいく治療成果を得るために、インプラント治療を受けようと思う方は、よく勉強してほしいと思います。最終的に治療法を選択するのは、あなたなのですから。
なお、インプラントを希望する方は、治療の説明を受ける分には、特別費用はかかりませんので、まずは、歯科医院を受診して、全体的な口腔内の検査と診査に基づき、あなたの場合のインプラントの可否やなおし方について、十分に納得いくまで説明をうけることをおすすめいたします。